家族が増えた時、減った時

健康保険では、被保険者だけでなく、被保険者に扶養されている家族にも保険給付を行います。この家族のことを「被扶養者」といいます。被扶養者として認定されるためには、「国内居住」のうえ、「家族の範囲」と「収入」について一定の条件を満たしている必要があります。

POINT
  • 被扶養者となるためには、健康保険組合の認定を受けなければなりません。
  • 被扶養者の異動があった場合は、5日以内に届出をしてください。

被扶養者の認定条件

健康保険法・通達に基づき、申請内容が基準を満たしているか、被保険者の扶養能力の有無などを総合的に勘案し、健康保険組合が認定をします。

「配偶者だから」「収入がないから」といって無条件で認定されるわけではありません。また、所得税法上の被扶養家族とは認定基準が異なります。

被保険者の収入により生計を維持されていること

  • 他に扶養義務のある人がいても、被保険者の方が主として生計を維持している
  • 標準的な生計費から勘案しても、被保険者に生計を維持されている

1.家族の範囲

扶養者となれる家族の範囲は、三親等内の親族と決められています。さらに、親等数により同居・別居の条件が異なります。

被保険者と同居(同一世帯)でも別居(別世帯)でもよい人 被保険者と同居(同一世帯)が条件の人
  • 配偶者
  • 子、孫
  • 弟妹、兄姉
  • 父母などの直系尊属
  • 左記以外の三親等内の親族

2.収入の基準

被扶養者となるためには、「主として被保険者の収入によって生活していること」が必要で、被扶養者は収入の基準が定められています(この場合の収入は所得ではありません)。

60歳未満 60歳以上・障害年金受給者
年収130万円未満
月額108,333円以下
給付金等の日額3,611円以下
年収180万円未満
月額150,000円未満
給付金等の日額5,000円未満
同居同一世帯
別居  
→ 被保険者の収入の1/2未満
→ 対象家族の収入が被保険者の仕送り額以下
  • ・収入とは、現在から将来に続いて生活費に充当されるもので、一時的なものは収入とみなしません(課税非課税を問いません)。
収入の種類 詳細
給与収入 税金等控除前の総収入金額(賞与・通勤交通費等を含む)
年金収入 厚生年金・国民年金・遺族年金・障害年金・公務員等の共済年金・企業年金・私的年金等
事業収入 製造業、卸売業、小売業、サービス業、農業、漁業その他の事業
  • ※「総収入額」から「事業運営に直接的な必要経費」を引いた「差引金額」を収入と判断します。
不動産収入 土地・家屋・駐車場等の賃貸収入
  • ※「総収入額」から「必要な経費」を引いた「差引金額」を収入と判断します。
利子収入 預貯金・有価証券利子等
配当収入 株式配当金等
継続性のある収入 雇用保険失業給付金・健康保険の傷病手当金および出産手当金・譲渡収入・被保険者以外からの仕送り等

【年収の計算方法の例】(複数あれば合算します)

  • ・年間収入とは申請時点において、認定された日以降の年間の見込み収入額です。
給与収入 [(直近3ヶ月の総支給額の合計÷3)×12ヶ月]+(賞与×支給されている回数)
  • ※給与・賞与とも、税等各種控除前の総支給額。通勤交通費も含みます。
年金収入 年金×支給される回数<年金は6回、恩給は4回>
  • ※社会保険料控除前の支給金額
自営業 売上金額-直接的必要経費
  • ※直接的必要経費とは、税法上の経費とは異なります。
雇用保険受給 基本手当日額×360日
  • ※基本手当日額が3,611円以下(60歳以上は5,000円未満)

自営業者の収入について

健康保険法の被扶養者の認定要件は収入が年間130万円未満(60歳以上または障害年金のある方は180万円未満)ですが、自営業者の場合は、「総収入金額から必要最低限の直接的必要経費を差し引いた額」であり、所得税法の年間所得ではありません。
なお、給与収入者については、総収入にて判断することとなっており、経費は認められておりません。

自営業者の収入額は、確定申告書類等を提出いただき確認します。

【収入を確認する書類】「写し」で可

  • 確定申告第1表・第2表
  • 収支内訳書
    • ※税務署の収受日付印の押印、またはe-Taxの場合は申告書上部に「電子申請の日時・受付番号」が印字されている申告書類(印字がない場合は受信通知も提出)

直接的必要経費は、その費用なしには当該事業が成り立たない経費(生産活動に要する原材料等の費用)で健康保険組合が認定した最小限の経費となります。
「収支内訳書(一般用)」では、売上原価(例えば、製造業における原材料費、小売業における仕入れ代、例:ケーキ屋の小麦粉や卵など)がこれにあたります。
下記経費については、直接的必要経費とは認められず、原則として総収入金額から差し引くことはできません。

差し引くことができない経費

給与賃金、減価償却費、租税公課、広告宣伝費、接待交際費、損害保険料、福利厚生費、青色申告特別控除 等

  • ※その他の経費については、事業内容に沿い、直接的経費にあたるか個別審査で確認します(帳簿や領収書等で確認させていただく場合がございます)。

3.家族が別居の場合

被扶養者とは、「主として被保険者の収入によって生活していること」が条件であることから、別居している家族を扶養する場合、収入が基準内であるとともに、次の基準をすべて満たす送金が必要です。
なお、認定対象者が配偶者または子の場合、被保険者の会社都合による単身赴任や認定対象者の就学による別居の場合は、送金証明は不要です。

送金額
  • 対象家族の年間収入見込み総額÷12ヶ月の金額以上
  • 対象家族が年収60万円未満の場合は月額5万円以上
  • ※仕送り後の被保険者の生計費が成り立つか等も含めて扶養判断をします。
時期 継続的に毎月送金している(ボーナス時のみや数ヶ月まとめての送金は原則不可)
  • ※認定時や資格確認の際には送金の事実が確認できる書類をご提出いただきますので、控えは大切に保管してください。
証明方法 下記の必須項目が確認できる書類
  • 日付
  • 金額
  • 振込人名
  • 受取人名
  • ※現金の手渡しは送金として認められません。

4.夫婦共同扶養(夫婦共働き)の場合の子の認定について

夫婦が共働きで子を扶養している場合、その子は年間収入の多い方の被扶養者とします。
ただし、夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合には、届け出により、主として生計維持をしている方の被扶養者とします。

扶養の申請対象として条件を満たしているか、下記チャートを使用してご確認ください。

被扶養者チャート

「年収の壁」に対する政府の施策について(2023年10月より)

参考リンク

「年収の壁」とは

「年収の壁」とは、税金や社会保険料が発生する基準となる年収額のことです。
健康保険等の被扶養者がパートタイマー等で働き、年収が一定以上になると、被扶養者ではいられなくなり、健康保険や国民健康保険等の被保険者となりますが、そうなると社会保険料の負担が発生して、結果として手取り収入が減少する場合があります。
社会保険における「年収の壁」は、企業規模の違い等により、年収106万円と年収130万円の2つがあります。

(出典:「年収の壁」への当面の対応策(厚生労働省))

年収106万円の壁

従業員101人以上の企業、賃金月額88,000円以上(年収:約106万円以上)等、一定の条件を満たす場合は、社会保険料が発生。

参考リンク
年収130万円(※)の壁 被扶養者の認定基準を満たさなくなるため、条件を問わず、社会保険料が発生。
  • ※60歳以上または障害者は180万円

年収130万円の壁に対する対応

被扶養者認定は前年の課税証明書等の確認で行われていますが、人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となる場合は、事業主の証明を添付することにより、収入見込額が130万円以上であっても、引き続き被扶養者の認定を受けることができるようになります。
(同一の者について原則として連続2回までを上限とします)

年収106万円の壁に対する対応

社会保険適用促進手当(※)の支給等、労働者の収入を増加させる支援を行った企業に対して一定期間助成が行われます。

※社会保険適用促進手当

短時間労働者への被用者保険の適用を促進するため、非適用の労働者が新たに適用となった場合、当該労働者の保険料負担を軽減するために支給することができる手当です。
社会保険適用促進手当は、給与・賞与とは別に支給するものとし、保険料算定の基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の算定対象に考慮しないこととされます。

  • ※対象者:標準報酬月額が10.4万円以下の方。
  • ※報酬から除外する手当の上限額:被用者保険適用に伴い新たに発生した本人負担分の保険料相当額。
  • ※最大2年間の措置。

被扶養者認定における国内居住要件の追加について

2020年4月より、健康保険の被扶養者認定の要件に、国内居住要件が追加されました。日本国内に住所を有していない場合、2020年4月1日以降は、原則として被扶養者の認定はされません。(海外留学等、一定の例外あり)

国内居住要件の考え方について

住民基本台帳に住民登録されているかどうか(住民票があるかどうか)で判断し、住民票が日本国内にある方は原則、国内居住要件を満たすものとされます。

  • ※住民票が日本国内にあっても、海外で就労している等、明らかに日本での居住実態がないことが判明した場合は、国内居住要件を満たさないと判断されます。

国内居住要件の例外

外国に一時的に留学している学生等、海外居住であっても日本国内に生活の基礎があると認められる場合は、例外として国内居住要件を満たすこととされます。

【国内居住要件の例外となる場合】

  • ① 外国において留学をする学生
  • ② 外国に赴任する被保険者に同行する者
  • ③ 観光、保養又はボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する者
  • ④ 被保険者が外国に赴任している間に当該被保険者との身分関係が生じた者
  • ⑤ ①から④までに掲げるもののほか、渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められる者

国内居住者であっても、被扶養者と認められない場合

医療滞在ビザで来日した方、観光・保養を目的としたロングステイビザで来日した方については、国内居住であっても被扶養者として認定されません。

経過措置について

国内居住要件の追加により被扶養者資格を喪失する方が、施行日(2020年4月1日)時点で国内の医療機関に入院している場合、経過措置として、入院期間中は資格が継続されます。

被扶養者の異動(変更)があったら

結婚や出産等により被扶養者が増えたときや、就職や別居、死亡等で、それまで被扶養者に認定されていた家族が被扶養者の認定基準を満たさなくなった場合は手続きが必要です。なお、当健康保険組合では毎年、被扶養者の資格を確認するための検認を行っています。